鍵屋ブログ
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0120-338-599お客様から「蔵戸の鍵を開けてほしい!」と御相談がありました。
江戸時代から明治時代頃に建てた蔵で、鍵を蔵の中に置いたまま施錠してしまったとのことです。
現場に伺うと中型杉格子蔵戸で、下部右側に木落とし・下部左側に鉄製親子落としの菊花紋錠前飾(逆くの字鍵穴)がついています。状態はあまり良くないほうで解錠するのに時間がかかると判断しました。
今までの経験や親方から引き継いだ文献から推測すると、左側の菊花紋錠は大正時代から昭和初期頃の錠なので、恐らく後から取付けたものと思われます。
さて、蔵戸を開けるためにはまずこの菊花紋錠(鉄製親子落とし)に合った蔵鍵を作らなければなりません。もちろん手作りなので作業は根気を要するものであり、頭の中にある図面と勘だけが頼りです。
蔵鍵を作製(復元)するにあたり、私はステンレスの1.5㎜から1.8㎜の厚みがある地金をよく使用します。比較的成型しやすいのと、カンヌキの反発力に負けないコシの強さと粘りがあるからです。
どの蔵戸錠にもいえることですが、同じ様式・構造であっても必ず個体差はあるものです。作業で注意することはその錠が持つ「クセ」を早い段階で見抜くことと、鍵穴に仮鍵を入れてカンヌキを押し上げる時に、錠内部で鍵が折れたり曲がらないように回転させる力を加減します。
ある程度、蔵鍵が仕上がったとしても、すんなりと解錠できる蔵戸はそうありません。錠が古いために錆びていたり、故障していて正常に動かないなどの不都合も発生します。そうしたトラブルをひとつひとつ排除するには、錠の仕組みを理解していなければできないものです。判断を誤ると動かなくなり大変なことになりかねません。時代物ゆえ替えがききませんので失敗は許されないわけです。それだけに蔵戸錠解錠は精神的に非常に疲れる作業の部類に入ります。
話を戻します。作業も最終段階に入り菊花紋錠を解錠し蔵戸を開けると、お客様のおっしゃるとおり蔵のなかに鉄製の蔵鍵がありました。キチンと使えるように錠を回復させ作業は終了となります。
今回こちらの旧家では、解錠鍵無作製作業完了までに3日間かかりました。銅板からの型どりからはじまり管キーの成型、そして蔵鍵が仕上がってからの微調整、最後に行なうある解錠手段を含んでの日数です。
無事に引き渡せることができて、ホッといたしました。ありがとうございました!
こうした蔵戸錠・社寺錠・その他年代物の和錠の解錠出張工事承っています。基本的に壊さずに解錠できますのでお気軽にご相談ください。
中型杉格子蔵戸の解錠作業のお話でした。